【2009年8月13日】 研修医日記 vol.58
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久しぶりの病院勤務です。7月中は地域医療研修で東通村診療所、保健所に行っていました。たぶん誰も地域医療枠についてはノータッチだと思うので、今日はそのことを書いてみたいと思います。
 まず東通診療所について。本当に勉強になりました。救外慣れしてきていた私にとってはとても新鮮で、衝撃を受けました。検診や定期でいらっしゃる患者さんの診察が意外と難しかったのです。普通の外来をやるのが初めてだったので、診療所の川原田先生にたくさんアドバイスいただきながらやりました。救外は診療科への橋渡しが役目ですが、その後のことを自分でやるとなると、わからないことだらけでした。それだけではなく、患者さんの生活環境も考えたことはなかったし、デイケアや産業医の巡回をしたこともとても良い勉強になりました。東通では本当に地域に根ざした医療をしていることを実感して帰ってきました。地域医療の原則、覚えてますか?包括性、近接性、協調性、継続性、責任性。私は恥ずかしいことに全く知らなかったのですが、実際やってみてその難しさを実感し、同時にとても面白いと思いました。地域の人たちに愛される医者、すごくかっこいいです。また、東通には全国各地から応援の先生がいらっしゃっていて、研修医も各地から来ていたので、たくさんの刺激を受けました。他病院の研修医と一緒に研修するだけで、意識もとても変わります。とても楽しかったです。1ヶ月くらい、もっと長く一緒に仕事したかったなぁ。奈良市立病院からいらっしゃっている武田先生からは、見学しているだけで本当にたくさんの刺激をいただき、気持ちが奮い立ちました。プライマリ・ケア医というスペシャリティのすごさを垣間見ました。
 次に、保健所についてですが、基本的に私たちは医師なので診療が仕事の中心なため、保健所で仕事を任されることはなく、保健所がどういった仕事をしているのか講義を受けるのですが・・・保健所はすごいところです。私の印象としては、人々の健康に関わる全ての物事を扱っているところ。そして、健康のために仕事をする頼もしいところ。行くまではやはり全然ピンとこなかったのですが、健康って何かを改めて考える機会になりました。健康って、医療だけが関係してるんじゃないんですよね、当たり前だけど。体、心、環境、食べ物、子供の育つ環境、など、それら全てが自分にとっていいものなのかどうか、そして、自分の目指す健康を実現するために何が必要なのか、私なりにヘルスプロモーションについて考えた貴重な2週間でした。最も印象に残ったのは、健康教育という、市民向けの講義を自分が行うもので、医療についてのお話(治療、検査、状態とかなんでも)を医学的知識のない人に話すことの難しさを実感して帰ってきました。普段も感じていたけど、さらに感じました。医者は、基本的に説明不足です。そして、何回も説明しないとわかってもらえないのは普通なのかもしれません。
 今日から実は小児科なのですが、そのことはまた明日以降に。小児科好きです。子供も好き。子供にも好かれる。というより自分がお子様なので、子供は私を仲間だと思っているのかもしれません。どんな2ヶ月になるでしょうか。

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 さっそく当直です。17時さっそく救急車が来るということで、イヤな予感です。その後も22時頃まで救急車ばっかり。5台来て、そのうち交通事故で頭から出血している人が3人。なぜこんなに事故ばかりなんだ。オーベンの先生と二人でぐったり、看護師さん達もみんなぐったりでした。夜中、うとうとするかしないかで呼ばれ、行ったらモンスターペイシェントでした・・・。医師にも正当な理由で診療拒否権があってもいいと思う今日この頃です。診療して殴られるってどういうことでしょうか。他にも怖い思いをしている研修医がいます。社会的なことを考えてしまいますね。その後も救急車でほとんど寝られませんでした。眠い眠い8/5に突入です。

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 日曜に来たエルシニア感染症の子が退院していきました。始めはアッペかなぁと思いましたが、お腹は硬くならず、エコーでも腸管の浮腫と回盲部周囲リンパ節腫脹とで、やはりエルシニアが疑わしいと検査を出したところその通りだったわけですが、小児科に来るまでにエルシニアの存在を知りませんでした。アデノでも同症状を呈することがあるみたいですね。勉強になりました。
 毎日外来や病棟を見ていて、子供は決して大人のミニ版ではないとよくわかります。今しか勉強できないことを、たくさん吸収したいです。

8/8・9
 連日救外日直でした。交通事故多すぎ。一気に10人救急車で来ました。重症な人はいませんでしたが、PTLS、トリアージもきちんと復習しないといけないと思いました。もし重症ばかりだったら、10人なんて一気に対応出来ません。みなさん気をつけて運転してくださいね。無理な追い越し、居眠り、厳禁ですよ。そして、むつでも新型インフルエンザが出ており、その波を受けてインフルエンザが出ていました。高熱でつらそうです。私も予防接種しないと必ず発症する(予防接種してもなるときはなる)ので、毎年の予防接種は欠かさないのですが、発症した時は本当につらいです。患者さんには紙を渡して丁寧に説明したつもりですが、伝わっているかなぁ。保健所の経験が生かされいているといいのですが。特にすごく重症な人は来ませんでしたが、9日最後に3ヶ月のCPAが来ました。みんなで頑張りましたが、残念な結果に。ルートがとれず、骨随内輸液もしたようですが(ちょうどインフルエンザを見ていてその現場には立ち会っていませんが)、難しかったようです。お母さんの悲痛な叫びがまだ頭の中に残っています。自分の子供だったら・・・気が狂いそうです。
 なかなかハードな土日でした。でも、疲れたとかなんとか言いながらも、やっぱり仕事は楽しいですね。もちろんつらいことも全部ひっくるめてです。最近、マイルドに仕事をすることを覚えてきましたが、やるとこはビシッと、もっと積極的に仕事を奪って行かないとと、改めて感じています。慣れは大敵です。
不意に、いつも私を応援してくれている三戸のおばあちゃんに会いに行きたくなりました。もう少しでお盆だし、元気にしてるといいな。おばあちゃん、大好きです。


2年目研修医 齋藤ちひろ