【2011年10月27日】 タイトル: 研修医日記 Vol.172

羽をやすめた枝が
ほそすぎて折れそうに思えても
それを知りながら
いざとなれば飛びたてばよいと
気楽に歌いつづける
鳥のようであれ
Victor Hugo

冷たい風が、もうすぐそばまできている冬の訪れを予感させるこの頃。
先日、ちょっとした冒険をしてきました。

初期研修も終盤を迎え、自身の進路選択に関して、今更ですが考えがまとまりましたので報告させて頂きます。

10月の某日、学生時代に一ヶ月間研修したT病院を訪れました。
私の中に眠る、忘れることのできない何かが、そうさせたのであったと思います。
T病院は県内では少ないT大学の関連施設であり、私がこれまで入局するつもりであった母校の医局の関連病院ではありません。
つまり、3年目以降T 病院で勤務することは、ほぼ今後母校とは関係を持たない道を選択することを意味します。

学生のとき以来の久々の訪院にもかかわらず、懇切丁寧な対応をしていただき、感謝の意は絶えません。事務方の皆様の対応、関わった先生方の誠実さ、地域の人々の生活の支えとなるT病院の素晴らしさ。決して私の心から離れることはありません。

私は消化器外科医として仕事をしたいという思いから、学生の頃より自身の進路につき幾つかの選択肢を考えてきました。

今から約2年前、自身の出身校の関連病院を初期研修先にと、特に何も考えず、大きな流れに乗り現在の病院を選びました。
学生の頃に青森県の奨学金を受けていたこともあり、県内での勤務が一定期間義務付けられているのですが、このような事情を考慮すると最も自然で、最も安易な道であったからです。特に何か不満があったわけでもなく、それなりに満足の行く日々を送らせていただいておりました。

しかし約2年半前のT病院での実習の体験があまりに素晴らしく、ずっと心のどこかで「本当にこのままで良いのだろうか」という思いが引きづられておりました。
半ば諦めていたのですが、少し前にいろいろと調べていたところ、偶然、T病院に残ることでも義務年限が達成できる道もあることを知りました。
時間は絶えず前に進みます。私はこのままでは一生後悔してしまうと思い、最後のタイミングと思われる先日、もう一度気持ちの整理をしたく、また、本当に進むべき道はどちらかを決めるべく、訪問させていただいたのでした。
今の病院の一部のまわりの先生方には、「やめたほうがよい」と引き止められたりもしましたが、やはりどうしても気持ちの暗雲を取り除きたかったからです。
実際に訪れてみて、やはり美しい土地、以前のように素晴らしい病院とスタッフ、ここで働くことが出来ればどんなに素敵なことだろうと、正直、心が動きました。

どちらも素晴らしく、もし人生が二度あるのなら、どちらの道も歩んでみたい、そんな思いに駆られました。どちらか一方に決めるのは大変困難な作業でした。
しかし結論を出さないわけには行かず、この数日間、ひたすらに考えて、ようやく決めなければならない結論に達しました。

もしこの2年間の初期研修制度が存在していなければ、心が迷うことなど無かったのにと、この制度自体を憎む不条理な感情も少し芽生えたり。。。

今の私を取り巻く周囲の状況、今後のことを考えると、母校に残ることがベストなのではないか、ということです。母校の医局、関連病院に残ります。

学生時代より大変お世話になったT病院は、本当に最高の病院です。
幸いにして、来春T病院では初期研修を終了するもう一人の医師が3年目として勤務されるようです。
同期の医師がご活躍されることを願っております。
また、T病院のこれからの一層の発展を願っております。

私は私の道を、私の歩き方で、しっかりと進んでいきます。

本当に助けを必要とする人々の、支えになるように。
一人でも多くの人々の、心に残る生き方を。


研修医2年目 島田 拓